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「……んど……遠藤っ!!」
「え、何っ?」
「どうしちゃったんだよ? さっきからぼんやりして」
米倉が少しずれた眼鏡を持ち上げながら上目遣いに尋ねてくる。またぼんやりしてしまっていたらしい。
俺は慌てて目の前にある計器を覗き込んだ。
「あ、ごめん。ちょっと考え事。何? どうかした?」
米倉は少し首を傾げて何か言いたげに眉をひそめたが、思い直したようにまだ血液の残っている採血管を持ち上げ目の前で少し揺らしてみせた。
「これ。さっき、採血したばっかの遠藤の検体なんだけどさ。血球計数器にかけたらエラーがでちゃって」
「エラー? 壊れてるの?」
「いや、壊れてるっていうか好中球とかリンパ球とかの数値が……いや白血球だけに限らず、全部が異常というか有り得ないというか……他の検体ではそうはならないし、計数器の故障ではないと思うんだよね」
計数器からプリントアウトされたデータを見ると、確かに先ほど教授が説明していた標準値をはるかに上回る数字が並んでいる。俺が自分で取ったノートとデータを見比べている間に、米倉はタッチパネルを操作し他のデータを表示させた。
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