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「この前、採血の基本手技習ったでしょ? あの時の検体がまだ残ってたからそれでも試したんだけど、ほら、それは何ともなくて」
「あ……、何か不純物でも混ざったのかな……?」
言いながら俺は一つの可能性にすぐに思い当たり、血の気が引いた。
――そんな奇怪な現象が起こる理由、一つしか知らない。
「うん、そうかもしれない。もう一回採血して計測しなおしてみようか」
「そっ、それはまずいって!」
そんな事をして、また同じ結果になったら余計に怪しまれてしまう。
慌てて立ち上がってしまったせいで椅子がガタンと大きな音を立てて倒れた。周囲の視線が何事か、とこちらに注がれる。
「どうかしましたか?」
こちらに向かって歩いてくる教授の姿が目に入り、俺は咄嗟にプリントアウトされたデータをくしゃくしゃと握りつぶした。
「すみません、急に腹の調子が……。昼食った弁当が傷んでたのかもしれません。早退させてください!」
我ながら情けない言い訳だ。周りから微かな笑いが起こるがいたしかたない。
ノートやら教科書をばさばさとデイパックに詰め込むと俺はそそくさと逃げるようにして実習室を出た。
後は米倉がうまく誤魔化してくれるのを祈るしかない。
とにかく、元凶である霧生さんに会って俺の身体に何が起こっているのか聞かないと。
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