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「大丈夫だよ。いくら飢えても人のパートナーの血を飲んだりはしないから」
俺の態度をどう勘違いしたのか、大槻さんはくすくすと笑いながら少し肩を竦めてみせた。
「パートナーだなんて、俺はそんなんじゃないです。ただの知り合いっていうか……」
実際には、もう知り合い以下かもしれないけど、ここで話をややこしくすることもないだろう。
「でも、君は霧生と契約を結んだんだよね?」
「え。ど、どうしてわかるんですか?」
言ってから『しまった』と思った。契約を結んだということはエッチしました、ということがバレバレなんじゃないか?
霧生さんが信頼している人物に、男と、それも俺みたいなうだつのあがらない奴とそんなことしたと知られるのは霧生さんにとってマイナスになるかもしれない。
「あ! いや……俺は、その……べ、別に」
だけど、俺の懸念など大槻さんは気にしていないように相変わらず穏やかな笑みを浮かべている。
「匂いがね、少し人間とは違うんだ。それに、瞳を見たらわかるよ。虹彩が少し赤みがかってる」
「え……」
自分では全く気づかなかったけど、確信をもってそう指摘されてはもはや反論の余地もない。
「まぁ、リビングでお茶でも飲みながらゆっくり話そうよ。もう僕たちにできることはないし、あとは霧生の生命力に頼るしかないからね」
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