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大槻さんから聞かされたのは、契約はヴァンパイアにとって生涯に一度しかできないとても大切なものだということ。つまりその契約を結んだ相手はたった一人のパートナーになるということ。
パートナーがいれば危険を冒して他人から血を吸う必要がなくなる。迫害され身を隠し、孤独に堪えるヴァンパイアにとってパートナーは肉体的にも精神的にも大きな支えになる。
さらに、パートナーはヴァンパイアと体液の交換を続けていれば老いることなく半永久的に生きられる、ということだった。
「体液の交換って、俺も霧生さんの血を吸わなきゃいけないってことですか?」
「あー……」
今まで流れるようによどみなく説明してくれていた大槻さんが、なぜか言葉に詰まり少し頬を赤らめた。
もしかして何かマズい事を聞いてしまったのだろうか。
「ヴァンパイアはパートナーから血を受け取るかわりに、自分の体液をパートナーに渡すんだ。つまり、えーと、契約と同じ要領なんだけどね。パートナーは、ヴァンパイアの体の一部を受け入れて……」
「わーっ! わかりました、よっくわかりました!」
俺は手をぶんぶんと振り回し大槻さんの言葉を遮った。知らなかったとはいえ、初対面の大槻さんにとんでもなく恥ずかしいことを言わせるところだった。体液の交換って要は、せ、セックスをするということなんだ。
「うん、わかってくれてありがとう」
二人で顔を真っ赤にして俯いていると、こんな非常時だというのに少しだけ緊張がほぐれたような気がした。
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