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食い入るように写真をみつめていると、いつのまに夜勤から帰ってきたのか親父が俺の背中越しにひょいと顔をだした。
「なんだ、懐かしいモノ引っ張り出してきて」
「うん、ちょっとね……」
「おー、霧生先生か」
親父からすんなりと名前が出て、どきりとする。
「親父、憶えてるの?」
「当ったり前だろ。霧生先生は俺の命の恩人だぞ。まだ若かったのに手術の腕前はピカ一だって評判でさ。俺は運がよかったよなぁ。そんな先生に手術してもらえて」
親父は俺の隣にどっかりと腰をおろすと、アルバムを引き寄せ懐かしげに写真を眺め始めた。
「今頃どうしてるかな、きっと大出世してるよなぁ。どこかの大病院の医院長にでも納まってさ」
「……」
さすがに、あなたの息子をかばったせいで大怪我しました、などと言える筈がなくて一瞬言葉に詰まる。
「あっ、ごめんな。朝飯の支度すぐするからさ。腹減ってるだろ?」
後ろめたさもあって誤魔化すように言うと、そそくさと立ち上がり台所に戻ることにした。
「お前が俺の怪我に責任を感じてるのはわかってる。だけどそれを負い目にして無理することはないんだぞ」
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