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第11章
大槻さんから預かった合鍵で鍵をあけ、そろりと扉を開けた。中は闇に包まれていて、しんと静まり返っている。
俺は「おじゃましまーす」と口の中で呟き、スニーカーを脱ぎ廊下を音を立てないよう歩いて、霧生さんが眠っている寝室の扉を開けた。
やはり、霧生さんはまだ眠ったままだ。
バイトの終わりに、授業の合間に。時間をみつけてはこうやって訪ねてくるのも、もう五日目になる。
霧生さんの体を拭いてパジャマを替えたり、洗濯物を干したり、掃除をしたり。細々とした雑事をこなすことしかできないけど、それでも霧生さんのために何かをすることで少しは気が紛れた。
大槻さんとはあの日以来顔をあわせることはないが、俺が干しておいた洗濯物が畳まれていたりするので来てるんだというのは知っている。もう一度、直接会って霧生さんのことをもっと教えてほしい気もするけど、知らないでいたほうがいいのかもと思ったりもして、わざわざ連絡を取ったりはしていない。
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