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第2章
気がつくと、見知らぬ無機質な白い天井。
消毒薬の匂いに混じって、先ほど嗅いだ柑橘系のいい香り。
反射的にガバっと起き上がると案の定、そこにはエロ医者の姿があった。
「気がついた?」
周りを見渡すと、白いパーテーションで区切られ二台の医療用ベッドが並べられている。ここはたぶん俺みたいに情けなくもぶっ倒れてしまった人間を一時的に休ませておく場所なのだろう。
しかし、この医者はさっき俺によからぬことをしたヤツだ。そんなヤツとこの狭い空間で二人っきりで、しかも俺はおあつらえ向きなことにベッドの上に乗っかっている。これは相当やばい状況なのではないか。
「ご、ご迷惑おかけしました。俺帰ります!」
テンパってあたふたする俺の肩にヤツの手がかかる。
「まだ横になってなさい」
優しく押し戻され髪を撫でられる。先ほどの凶行がまるで嘘のように落ち着いた仕草だ。
「もう襲ったりしないから」
襲ったという自覚はあるらしい。
「さっきはなんであんなこと……」
「ん? 気持ちよくなかった?」
整った眉をハの字に下げ、実に意外そうに首をかしげる。
……こいつと意思疎通しようなどと考えた俺が馬鹿だった。
「き、気持ちいいとかそういう問題じゃなくて! 初対面の人間に、しかも同性に喰らい付くなんて飢えてるんだかなんだか知らないけどまともな人間のすることじゃないでしょうが! あんた一体なんなんですか!」
俺が一気に捲くし立てると、エロ医者は一瞬ぽかんと鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたかと思うと、さっと表情を曇らせた。
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