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「それにしても『平成』か……」  慌てて駆け込んだ終電内、息を整えてからもう一度スマホを確認する。  当たり前だけど、募集要項に示されたお題に変更はない。 「これって嫌がらせか?」  確かに今上天皇(在位中の天皇)の退位が予定され、年号の変更(平成の終わり)が迫ってる。  これをお題にするには最適な(ちょうどいい)タイミングなのかも。 「でも、年号をお題にして何書けってんだよ?」  『平成といえば○○』といった具合に、平成ならではの符丁(サイン)があればそれを書けばいい。  けど30年目に突入した年号にはあんまりにたくさんの情報が絡みついてて『これだ』って代表になりえる符丁(サイン)はない。  逆にその多さ故に起こった事件や風潮、変化を網羅するのも無理筋(ムチャ)だ。  かと言って、特定のひとつに絞るとその事柄の小説になって、平成のテーマから遠ざかる。  当然、面白くもなきゃいけない。  本当に頭が痛いお題だ。  いっそあきらめて別の賞に応募した方が建設的なんじゃないか?  ――それもありか  頑張って書き上げて、賞に送っても受賞できる(金になる)とは限らない。  むしろならない確率の方がずっと高い。  賞金額だってそれなりだ。  わざわざ火中の栗に手を伸ばすのは賢くない(バカらしい)。  でも、しかし、だが……むぅ…………。
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