01.セピア・メモリーズ

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なぜ、今そんなことを思い出しているのか。自分でも不思議で、目の前で柔らかく微笑む春の日差しのような表情をしている彼女に懐かしさを覚えいるからだろうか。 幼馴染、というにはいささか難があるかもしれない。ただ、小学校から中学、高校とすべてのクラスが一緒だったという稀有な存在だ。 くだらないことを話した思い出しかない。マンガやアニメのような甘酸っぱい記憶があったかと言われるとなんとも言えない。ただ、自分の意思疎通が大体困ったらあちらに投げれば良いのだと思っていたし、向こうも同じことを考えていた。昼休みにギターをかき鳴らすクラスメイトたちの歌に耳を傾けて、元の曲はあんな薄い歌なんかではないのだろうねなんて話したこともあったはずだ。けれど、その歌は今もこうやって記憶に残っている。 だからこんなにも鮮明に、色鮮やかに残っている、のかもしれない。好きな曲なわけじゃない。メロディーもフレーズもよくあるもので、特別ヒットした曲というよりもたくさんの当時のヒット曲に埋もれてしまいそうな、ものだ。なのに、今、思い出のように残るのは。たぶん、青春そのものを駆け巡ってきて、めくるめくこの世界を楽しんでいられる曲だったからかもしれない。
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