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ハジマリ
街を歩けば至るところで同じゲームが宣伝されている。『クロスアンリアル』という題名のゲーム。AR技術を駆使しすることで¨現実と非現実の境界線を壊すことに成功した¨と話題になった。その技術革新がこの大ヒットゲームの人気を支える根幹の1つになっている。そのブームは他のゲームの追随を許さず全国大会が開催されるほど流行っていた。60メートル級の建物が整然と並ぶ大通りを友人と肩を並べて歩く片谷陽一も今日、デビューする予定である。
「陽一、届いたか?クロスアンリアル」
正面から歩いてくる人に道を譲った三島広樹は陽一の隣に戻り聞いた。
「ああ、今朝届いた。まだ開封してないけど」
販売からもうすぐ2年となる。販売路線がようやく安定してきたとはいえ、いまだに品薄の状態が続いている。1週間前に幾度目かの追加販売の予約受付がありやっと手に入れる事が出来た。
「あの現実と非現実が入り交じった感じはマジでスゲェ!陽一も絶対ハマるぞ」
クロスアンリアルの魅力を熱弁していた広樹が足を止めたのは家電量販店の前。
「どうした?」
「見てみろよ」
ショウウィンドウに並べられたテレビで去年の全国大会の様子が映されている。ゲームとテレビの両方の宣伝を兼ねて流しているのだろう。3人1組でのチーム戦、その一回戦の映像。ティラノサウルスを連想させるモンスターとマンモスを彷彿させるモンスターが交戦している映像。それを見て広樹が拳を強く握りしめた。
「陽一、絶対全国大会に出場しようぜ!」
半ば強引に約束を取り付けられた。
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