大会メンバーと対人戦と

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遠巻きに先程の少年が戦っているのが見える。パートナーの姿は見えないが少年の表情から苦戦しているのは分かった。 「ごめんなさいマスター。負けてしまいました。」 マシロが重たい口を開いた。今にも泣き出してしまいそうな顔。その顔を見ていると左手が痛くなってきた。 「いいよ。勝負だから負けることもあるしね?それに悪いのはマシロじゃくて僕の指示……」 「……それでも……勝ちたかったですよね……?」 「……うん」 「次はっ!次は絶対勝ちますからっ!だから……デリートしないでっ!!」 マシロ……いやマシロに限らずパートナーはゲームキャラクターでしかない。以前彼女自身が口にしていた『パートナーはクロスアンリアルを楽しんで貰うのが本懐』だと。勝ちたいと思った陽一に白星を贈れなかった。自分の存在価値を危惧しての発言――。 「そんな思い詰めた顔しなくていい。1回や2回―――ううん、何回負けてもデリートしないから!」 「マスター……」 太陽を反射した雪のように明るくなったマシロ。陽一は彼女の頭の上に左手を置いた。なんでそんな事をしたのか陽一自身分からない――――。敢えて言うなら、そうすべきだと思った――だろうか。     
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