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陽一に広樹、そこに茉央を加えた3人は市橋公園を出てブリキングへと戻ってきた。店内は朝よりも客が増え賑やかになっている。4階のカウンターで短髪の店員から用紙を受け取った。『クロスアンリアル~~ブリキング大会~~申し込み書』と書かれた用紙。あまりこの店を訪れない陽一たちは店主催の大会があることすら知らなかった。茉央に言われ改めて店内を見れば確かにポスターが貼られている。大きくカラフルに書かれたクロスカップのポスター、その脇にモノクロの小さなポスターで『ブリキング大会開催のお知らせ』と宣伝してある。
陽一たちもその大会に参加してみようと申し込みに来た。個人戦とチーム戦とで分かれておりチーム戦の方に参加しようとしている訳なのだが――陽一は不特定多数の視線が気になってしょうがない。半分は茉央に向けられた視線。彼女のルックスなら周囲の目を釘付けに出来るのも頷ける。けど、もう半分の視線。好奇の目と憐れみが入り交じったような視線……。これが茉央を通り越して陽一と広樹に降り注いでいる。
「チーム名、どうする?」
茉央がチーム名の記入欄でペンを止めた。 「何でもいいよ」と陽一が答え、広樹が「俺も」と同意すると茉央の手の中のペンが空欄を埋めていく。
『渦巻く怨嗟の覇者』
丸みを帯びた可愛い字で書かれたチーム名。受理する店員の口元が緩んでいる。
「ありがとうございます。参加の登録終わりました。」
店員が告げる死刑判決。公開処刑は3週間後の日曜日に決まった。
「今からやろう?」
茉央が眩しい笑顔でデバイスを翳した。
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