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ブリキング大会
茉央と出会ってちょうど2週間。10月も半分を終え肌寒くなってきた。この市橋公園もすっかり秋色に染まったと陽一が思っていると、紅い落ち葉を踏む音が近づいてくる。まるで秋ファッションの雑誌から抜け出した女性モデルのよう。言動のおかしい残念な美人、茉央だ。
「おひさー!」
明るい笑顔で茉央が右手を振る。陽一も右手を上げ「久しぶり」と返した。
「広樹は?」
「パシり中」
と陽一が道を挟んだ向いのコンビニを指差す。茉央が指の先を見るとちょうど白いビニール袋をぶら下げた広樹が横断歩道を渡っていた。
「なんだー。折角、書いたのに無駄になっちゃった」
茉央の鞄から白い紙が2枚出てきた。それを残念そうにくしゃくしゃに丸め再び鞄に仕舞う。陽一は一瞬だが紙に何が書かれているのか見てしまった。黒いインクで書いた怪しい魔方陣……。茉央の整った横顔を見て思う。本気で呪う気だったのか?と――。
「ん?茉央ももう着いていたのか。ほれ、陽一買ってきたぞっ!」
ビニール袋から取り出したペットボトルのお茶を陽一と茉央に渡した。
「どうかしたか?」
広樹が陽一の目を見て聞くと遠い空を見て答えた。
「綺麗な花には棘があるって本当だったんだなーって」
「なんだそれ……?」
広樹がどうゆう意味なのか聞こうとすると拡声器を使用した声が公園中に響いた。
「えーー、予定より少し早いですがこれよりブリキング大会の受付を開始します。チームメンバー全員で受付にお越し下さい」
アナウンスが終わると公園にいた人が移動を始める。公園のフェンス沿いに出来た人の列。先頭は併設している¨市橋スポーツセンター¨へ続いている。体育館とグラウンドとあるがブリキング大会はグラウンドを使う。北から西にかけL字に作られた客席。普段は学生や企業のスポーツチームが練習や試合をしているのだが今日は貸し切り。そのためサッカーゴールや野球のベースは姿を消している。
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