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大会メンバーと対人戦と
「おい!陽一。明後日の日曜日『ブリキング』行くぞ」
数学の授業が終わった瞬間、陽一の机がガタンと揺れた。揺らした友人に対し溜息をつく。
「いきなりだな?またイベント?」
陽一は広樹が言ったブリキングの情報を脳内から検索した。ブリキングは電車で5駅行ったところにある大規模な玩具専門の店だ。ゲームやプラモデル、フィギュアにトレーディングカードと玩具関連のものは一通り揃っている。陽一が最後に行ったのは2ヶ月前。その時も広樹に「クロスアンリアルのイベントがあるから」と強引に誘われたのだ。
「今回はイベントじゃないぞ。仲間探しだ!」
「仲間探し?」
怪訝な顔の陽一に口角を上げ白い歯を見せた。広樹はオレンジ色のスマートフォンを操作してクロスアンリアルの公式サイトを陽一の眼前に突き出す。
「ここ、見ろよ」
「えっと、クロスアンリアル全国大会――通称『クロスカップ』?」
「そっ!今年も開催決定!今年こそ地区大会を勝ち抜いて全国大会に出場してやるぜ!」
「ホォ~~、夢があっていいなー。頑張れよ」
「おう!で、だっ。参加には3人のメンバーがいるんだ。俺とお前と――あと1人」
「あっ、ヤッパリ僕も入ってるんだ。それでもう1人を探しに行こうと?」
「イエス!」
数学の教科書とノートを鞄に入れ代わりに英語の教科書とノートを机に広げた。
「別にいいけど、メンバーなら学校で探せばいいんじゃね?」
「……断られた。皆、出場する気はないとか他のメンバーと組んだとか言って」
陽一の机に突っ伏して震えた声で訴える。握った広樹の拳が何度もノートを叩く。彼の嘆きを遮るように始業のチャイムが鳴り響く。
「じゃあ、また……」
ふらふらと自分の席に戻って行く広樹の背を見送り、教科書とノートを開いた。
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