チーム戦

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チーム戦

時計の液晶が14時を映す。市橋公園のシンボルであるシルバーの大時計が時刻を知らせるメロディーを奏でる。メロディーに耳を傾け風に身を任せていた茉央が目を開けた。どこか遠くを見ているような、見えないものを見ようとしているような瞳。だけど、その姿はとても美しくて……。 「長き封印より目覚めし盟友よ!柊 茉央の名を持って願う。清き泉を枯れ果せし怨嗟の業火!今ここに次元の壁を超え仇なすものを焼き払えぇ!!」 茉央がデバイスを起動させた。高速で集束したデータがパートナーの形となる。 死装束を着た桐の箱。その箱は正しく棺桶で蓋もあり開けられるようになっているし、顔の位置には窓がついている。頭?の部分にはだらしなく付けられた三角頭巾。四角く平な頭の上では円状に並べられた蝋燭が炎を揺蕩わせている。側面からつきだした2本の腕には釘と金槌、底からは立派な脛毛を生やした素足。 「これは――」 その姿を見て絶句する陽一。 「ダサ――じゃなくて、えーと斬新な……」 対人戦を通して沢山のパートナーを見てきた広樹ですら、その姿には戸惑いを隠せないでいた。 「ふふーーん!これがアタシのパートナー『ブラド』よ!」 胸を張って自慢のパートナーのアピールを始めた。 「チョッと見て!この着崩した死装束!絶妙な角度の天冠!洗練されたフォルムの棺桶!美しい木目!漂う桐の香り!最高でしょ?そう思うでしょ?でしょ?」 陽一は力説する茉央を見て一生分かり合えないと感じた。
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