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パートナー
三島広樹と訪れたのは学校近くのファミレス。料理を注文すると広樹がイヤリング型の受信機を装着しクロスアンリアルを開始する。
「ほれほれ、陽一。お前のパートナーも見せてくれよ」
いつになく楽しそうな顔をしている広樹が陽一を急かした。学校では禁止になっているので鞄の中に入れておいたデバイスと受信機を取り出しゲームを始める。
「コイツが広樹のパートナーか……」
赤い鎧のモンスター。猛猛しいその鎧は幾千もの死線を潜り抜けてきたかのように傷だらけ。手に持つ斧もまた然り……。
「ああ、ヴォルフって名前だ。強いゾー!コイツは」
ニヤリと笑う広樹。陽一よりも長い間このゲームをプレイとしているのだ。何回も戦闘を繰り返し来たはず。その上で¨強い¨と言い切ったのだから相当な自信があるのだろう。
「その子がお前のパートナー?」
「あ、ああ……」
ヴォルフに遅れてマシロが現実世界に顕現した。カラフルな彩りの店内に現れた雪の結晶。汚れを知らない純白の可愛い少女の存在は、どのカラフルな装飾よりも目を惹いた
「人型のパートナーか!スゲェー可愛い子だなぁ!!」
頭の先から足の先まで一通り見た広樹の目が腰の剣で止まる。
「……やっぱり剣なんだな……」
「ん?何か言ったか?」
ボソッと呟いた広樹の声は他の客の喧騒に飲み込まれ消えた。
「……名前を聞いたんだよ」
「名前は¨マシロ¨。全身真っ白だからマシロ」
「マスター、この人は?」
「友達の三島広樹だ。よろしくしてやってくれ!」
「よろしくお願いします。」
広樹に礼をするマシロ。頭を上げれば当の三島広樹は唖然としていた。
「?」
「マスター、広樹さんはどうしたのでしょう
?」
マシロが不思議に思い陽一に問いかけるが陽一にも広樹が何に驚いているか分からない。
「おーい、何をそんな驚いているんだよ?」
「な・ん・でぇ!会話を・しているんだぁよぉぉ!!」
テーブルに身を乗り出し詰め寄り問いただす。
「ちょっ!落ち着けっ!」
取り乱している広樹の肩を掴んで力任せに椅子に座らせた。2人の間で板挟みにされたテーブルは地震でも来たかのようにガタガタと揺れコップの中の水が飛び交った。
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