第三章 最悪の初めて

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「許せない、っての。せっかく楽しいことしてたのに邪魔されて、俺はかんかんに怒ってます、ってこと」 「そんな」  だから、と腕をレンヤの肩に回し、その細い顎をくいっとつかんだ。 「だから、お前が責任取れ」  肩に回した腕に軽く力を込めて動けなくしてから、ガイはレンヤの唇を奪った。  「ん、んんッ!」  レンヤはもがいた。もがいて暴れて、逃れようと身をよじった。それでも、ガイは腕にこめた力を緩めない。重ねた唇を、離さない。  酔ってるんだ。酔ってるから、ふざけてるんだと、レンヤは固く眼を瞑った。そのうち飽きて、帰るはず。  しかしガイは飽きるどころかじっくり唇を味わってくる。舌が、咥内に差し込まれてきた。 「んんぅ!」  喉奥に逃げるレンヤの舌を探り、舐めてくる。繰り返し繰り返し、優しく撫でてくる。静かに去っていった舌は、甘い響きで囁いた。 「力、抜け」  そして、再び唇が重ねられた。ガイの舌。ゆったりと口の中で動いている。恐る恐る、レンヤは舌を伸ばして触れてみた。待っていたかのように応じてくるガイの舌は軽く踊り、絡ませてきた。  柔らかなガイの舌はひどく心地いい。絡めあっていると、ただ気持ちいい。  人の舌とはこんなに柔らかいものなのかと、レンヤは口づけに夢中になった。  長い、長いキス。  唇を離すと、甘い息をついた。瞳は潤み、ガイの姿をうっとりと映し出していた。 「酔って……」 「ん?」 「酔って、いるんだろ? だから、こんなことを」  自分はからかわれているのだ、という気持ちはレンヤの中にしっかりとあった。そんな彼に、酔ってます、俺は酔ってますよ、と歌うように答えた後、ガイはもう一度軽くキスをした。 「酔ってるから、こんなこともしちゃう」  そして、レンヤをソファに押し倒した。 「や……」  ガイの唇が首筋を吸ったとき、レンヤはただそれだけしか言えなかった。腕を縮め、硬く身をすくませ、まるで動けなくなってしまった。 「イヤじゃねえだろ。俺のこと、嫌いじゃねえな? ん?」  そのとおりだ。嫌いじゃない。だから僕は、きっとキスされたときもおとなしく許したんだ。本気でイヤなら、拳をぶつける勢いで拒めたはずだ。
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