第三章 最悪の初めて

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 目を閉じて浮かんでくるのは、かわいい弟分だったレンヤの姿。幼い頃の親友だった。  一生懸命ついてくるその姿。そのたびに、わざと突っぱねてきた。くやしかったら早く追いついてみろと笑っていた。  いつの間に、あんなに綺麗になったんだろう。心をとらえて離さない存在になっていたんだろう。  酔いにまかせてねじ伏せたことを、今ではひどく後悔していた。傷つけてしまったそのことを、後悔した。いたぶって確信したのは、本当に彼は何もかもが初めてだということ。キスも、愛撫も、初めて受け止めることだったということ。 「あぁ、自己嫌悪」  レンヤの言葉を真似てみた後、もう一口ビールをあおった。  ガイが離れていった後も、レンヤはソファにうずくまったまましばらく動けずにいた。  乱れた服を握りしめ、震えていた。    追いつきたい、肩を並べて立ってみたいと憧れていたガイ。彼が、せっかく自分の方からやって来てくれたのに。あのまま抱かれていれば、同じくらい大人になれたに違いないのに。  なぜかこぼれてしまった涙を、ぬぐった。  恥ずかしい。泣き顔を見られた。  でも、やはり怖かったのだ。それ以上に、悲しかったのだ。酔って絡んでくるように、体を求められたことが悲しかった。酔狂でひとつになって、翌日はやはり今までと同じようにつかず離れずの関係であり続けることが悲しかった。  彼の大勢のガールフレンド。気が向いたときにだけ慰めあう、そんな体だけの関係になることが悲しかったのだ。  それでもいいじゃないか、と囁いてくる心の声。  幼い頃から憧れだったガイに認めてもらえるのなら、それでもいいじゃないかと思いこもうとする心の一部。  でも、違う。  僕が求めていたのはそんなことではない、と首を振る。  ガイ。いつの間に、こんなに僕の心を占めていたんだろう。胸から溢れてしまうほど、いっぱいいっぱいの想い。  声もたてずに、ただ涙が流れた。
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