第四章 幼馴染以上になる!

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 翌朝、珍しくガイは寮の共同食堂へその姿を現した。  S級生徒となりキッチン付きの快適な部屋へ移ってからは、ほとんど自炊でその腹をまかなっている。  決められた時刻に、決められたメニューで腹を満たすなどごめんだ。食べたい時に、食べたい物を食っていたいのだ。  そんな彼が朝一の食堂へ来たのは、もちろん食事が目的ではない。それでもトレイに一人分の朝食を準備し、本来の目当てを探した。  窓際の席で、お上品にパンを一口大にちぎっているその姿。 「よう」  軽く声をかけて向かいの席へ座ると、レンヤは驚いて顔をあげた。 「あ、お、おはよう」  すぐに視線がそむけられた。昨日のことを気にしているに違いない。ぎくしゃくした警戒心が伝わってくる。  一方のガイは、まるで何事もなかったかのようにふるまった。パンをかじり、コーヒーで流し込むとやはり気軽に声をかけた。 「午後、空いてるか?」 「え? あ、うん」  昨日はS級同士で模擬戦をやったのだ。翌日の今日は、クールダウンのために丸一日休養日になっていることは解かっている。  そのうえで、ガイはレンヤを誘った。午後、一緒に出かけないかと誘ってみた。  耳打ちするためにそっと顔を近づけると、昨日の事が思い出されるのかレンヤの首が退く。それでも軽く耳を引っ張り、ガイはレンヤに囁いた。 「映画、観に連れてってやるよ。行こうぜ」  映画、とレンヤは驚いて声に出した後、あわてて手で口を覆った。 「でも、外出許可は取ってないし」  だからダメだと、やんわりお断りするつもりのレンヤ。だが、それは想定内の返事だ。 「俺が抜け道から、こっそり連れ出してやるよ。そんなもん、いらねえ」  なんて強烈な誘惑だろう。返事ができずにおろおろしているレンヤににっこり笑うと、決まりだな、とガイは席を立った。 「午後、迎えに行くから着替えて待ってろ」  後は、さっさと食堂を後にした。  かわいそうなレンヤは、午前中いっぱいかけて悩むだろう。  だが、ガイには自信があった。絶対乗ってくるという自信が。  幼い頃から一生懸命自分を追っていたレンヤ。今回もまた、精いっぱい背伸びしてついてくるに違いないのだ。
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