第四章 幼馴染以上になる!

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 そう。まずはデートからだろ。  ガイは、何もかもが初めてのレンヤに気長に付き合うことにしたのだ。  いきなり押し倒したりすれば、泣かせてしまう。だったら、泣かないように、自然に求めてくるように仕向けてやるのが俺の務めだろ。 (そして、幼馴染以上の……、恋人になってみせる!)  デートなんてやったことがないのは、俺も同じなんだけど。  あぁ、面倒くせぇ。  暗い映画館の中、ガイは映画よりレンヤを見ている方がおもしろかった。  タイトルは何にしようか迷ったが、大人も子どもも楽しめるようにリメイクされたヒーローアクションもの。これなら無難なところだろう。  派手なCG効果で銀幕がフラッシュするたび、びくりと身をすくめ眼をぱちぱちさせている。いつのまにかそっと伸ばしたガイの手を握り、爆破シーンが起こるたびにぎゅうと強く力を込める。  そして、主人公が悪の組織に身内を殺され涙する場面では、一緒にもらい泣きしているのだ。  あまりにも素直なその反応は、すれっからしの少女ばかり相手にしてきたガイには新鮮だった。  ラストで正体を明かし、ヒロインと口づけを交わす主人公。そんなお子様向けのラブシーンにも頬を赤らめ、うつむく姿はかわいかった。  映画館を出て、カフェに入った。テラスで気持ちよく風を受けながらメニューを開く。これも学園では褒められた行為ではないのだが。  色とりどりのメニューに迷っているレンヤだったが、周囲をちらちらとうかがう眼の先にあるものは、ガイには解かっていた。 「コーヒーと、紅茶と、それからフルーツパフェ」  え、とレンヤは眼を丸くした。  僕は、紅茶しか選んでないのに。 「滅多に来られねえだろ。食いたいもん食っとかなきゃ後悔するぜ?」  どうしても罪悪感から逃れられない様子のレンヤ。でも、パフェが運ばれてくると喜色満面で冷たく甘いパフェを口にした。味見させてくれよと茶匙を伸ばすガイと一緒に、ひとつのパフェを味わった。  楽しい。すごく楽しいな。  ようやくそう感じる余裕がレンヤに出てきた頃は、もう夕暮れ時だった。
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