第四章 幼馴染以上になる!

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 寮の前で別れ際、ガイは改めてレンヤと向き合った。 「今日はありがとう」  レンヤの素直なその言葉。  警戒心はすっかり解かれ、ただ無邪気に無防備に笑っている。そっと頬に手を伸ばしても、なんのことやらといった風の顔が愛らしかった。 「キス、してもいいか?」  は、とその時初めて、思い出したようにレンヤは顔色を変えた。しかし、頬に当てられた手を振り払ってはこない。そろそろと顔を近づけると、瞼が閉じられた。  唇が、触れ合う。  合わせたまま、その体温を互いに感じた。唇の柔らかさを、互いに感じた。  それだけで、離した。  顔を離すと、レンヤは意外そうな表情をしていた。そうだろう。昨日はさんざん濃厚なキスを交わしたのだから。  それでも、嬉しそうに頬を染めている。これでいい。まずは、はじめの一歩から。多分これが、普通の手順なんだろうから。 「またな」 「うん」  自分の寮へと登ってゆくレンヤを見送りながら、ガイはやたら照れていた。  男を真面目に1から口説くとか、ありえねえ。    そんなことを考えないでもなかったが、レンヤは可愛すぎた。  キスの時に震えていた、あの肩。手に触れた柔らかな髪。甘い吐息。  俺のものにしたい、どうしても欲しい。見送る時間さえ心地いい。  食いたかったら食う、飲みたかったら飲む、寝たかったら寝る。そんな好き放題に生きてきた中、ガイは初めて待った。レンヤを待つことを始めた。  真面目なレンヤに合わせることは大変だった。  わずかな休憩時間に姿を捜し、見つけたと思えば残り5分。それなら夜にと忍んで行けば、もう寝るからと早々にさよなら。  しかし、そんな事を繰り返すうちに、ガイはレンヤの一日のリズムを把握した。  決められた時刻に食事や修練、講義をこなし、空いた時間は大抵植物園や図書館、温室などあまり人の居ない場所で過ごすことが多いようだった。 「人の多い場所は、落ち着かないから」  そう話すレンヤの表情は硬い。  確かに落ち着かないだろう。人込みに居れば、必ずその美しさに誘われた人間が視線を送ってくる。話しかけてくる。  驚いたのは、結構頻繁にお誘いを受けている点だった。  夕食を一緒の席で摂ろう、だの、休憩時間に遊歩道を散歩しよう、だの、修練後、特訓に付き合ってください、だの。    
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