第四章 幼馴染以上になる!

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 そして、どれも決まってお断りしている。  それもそうだろう、一人ひとりにいちいち向き合っていれば体がいくつあっても足りやしない。そして、ひとりに付き合えば、浮いた噂がぱっと広まることだろう。  性別を超越した美しさを持つレンヤは、相手が女だろうが男だろうが、愛だの恋だのを絡めた眼で見られてしまうのだ。  そんな中、一種の優越感をガイは感じていた。  レンヤを物欲しそうに取り巻いているやつらに、舌を出してやりたい気分だ。  俺はAまで済ませてるんだぜ、と笑ってやりたい。Bは未遂に終わったが。  そして、そんなキスを毎日繰り返す方法を編み出した。  おやすみのキス、というヤツだ。    夜に忍んでわずかな時間、共に過ごす。ではおやすみと別れ際、戸口でキスを交わす。  一体誰が、こんな素敵なキスの仕方を考え出しやがったのか。表彰してやるから出て来い。  ガイは毎夜キスを繰り返した。唇を合わせるだけの、お子様キス。それでも、長い石段を降りてゆく間、その感触を反芻してはニヤニヤしていた。  なんだこりゃ、バカバカしい。さっさと襲っちまえ。  そう心の中で自分をからかう、もう一人の自分がいる。  でも、どちらの自分も結構今を楽しんでいるのだ。ゆっくり時間をかけて、レンヤの心を、体を解きほぐしてゆく時間を楽しんでいるのだ。  おかげさまで、軽いキスなら怖がらずに応じてくれるようになったレンヤ。さて、次はどう攻略するか。そんな作戦を練る時間もおもしろいものだった。  それに、毎晩無駄に会っていたわけではない。必ず手には本を持って訪問した。カラー写真の美しい画集や、写真集だ。  二人で寄り添って眺めては、距離を縮めてきた。肩に手を置いても、腰に腕をまわしても、まるで自然に触れ合う事を許し始めているレンヤを、今後どういう風に攻めていくか。  初対面の少女と2時間後にはセックスしていた時とは、わけが違う。  丁寧に、時間をかけて、レンヤを少しずつ手に入れてゆく楽しさは、これまでにない悦びをガイにもたらしていた。
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