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「喧嘩だ!」
ガイの周囲のクラスメイトが、どっと窓際へ駆け寄った。
喧嘩くらいで大騒ぎしやがって。
さらさら興味なし、といった風を気取ったガイだったが、今日の喧嘩は勝手が違う。
「おぉ、すげぇフック!」
「見た? 今の!」
「うゎッ、水面蹴りした!」
「誰? あいつ」
「知らん。知らんヤツ!」
2階の上から見ているので、実況も俯瞰的で解かりやすい。それでも、『すごいフック』と『水面蹴り』をただの喧嘩で盛大にかます『知らんヤツ』とは謎めいた男だ。
「どれどれ~?」
ようやく重い腰を上げたガイが窓際に行った時には、もう決着が付いていた。
知らんヤツが、何か叫んでいる。
「見た目で人を判断するな。解かったか!」
なるほど、男と思って見てみたが、実は女だった、と見せかけて、やはり男なのか。
くどい話だが、この知らんヤツは、女と見間違えるほど綺麗な容姿をしているのだ。
淡い色の長い巻き毛。澄んだ青い瞳に、抜けるように白い肌……。
そして、掻き揚げた髪の下からのぞいたのは、青い石のピアス。
「まさか」
ガイは、無意識のうちに耳に手をやった。触れたのは、赤い石のピアス。
レンヤ……?
唇は懐かしい名をなぞり、ガイはそれきり何も話せなくなった。
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