第二章 再会

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「転入生の、シマ=レンヤくんだ」  担任が事務的な口調に、少しだけ色を付けている。生徒たちの反応が楽しくてたまらないのだ。  クラス中の人間が息をのみ、教室の酸素がわずかに薄くなった心地がした。    なんて綺麗な男だ!  女子はその見た目に重きを置いたが、男子はその強さに重きを置いた。  朝一番の喧嘩騒動はあっという間に学園中に広まっていたのだ。怒らせると怖い男、そして途方もなく強い、という事実はプラスイメージのレッテルとして、レンヤの名札に貼られていた。  ガイは試しに例の赤いピアスを付けたまま、自分の席に座っていた。  解かるかな、俺が。  そんな風に、レンヤを試すような心地でどきどきと座っていた。  レンヤに作られた席は、ガイの席から遠い。それでも彼は、一人ひとりを確かめるかのようにしながら、ゆっくりゆっくり歩いてくる。 「……ガイ?」  周囲が、ざわめいた。  どうしてレンヤは転入したばかりなのに、この問題児・ガイを知っているのか。 「ガイ、だろう。赤いピアス、持っててくれたんだね」  あまりにも見事な再会シーンとなってしまった。ガイは、ピアスの石のように耳たぶを真っ赤にして、一言だけ言った。 「……当たり」    そう言った途端に、俺は強烈な力で締め上げられた。レンヤが、突然抱きついてきやがったんだ。 「嬉しい! 久しぶりだね、ガイ!」  柔らかい髪が、首筋に当たる。やけにいい香りが、鼻をくすぐってくる。 (この怪力さえなければ、マジ女なんだけど!)  大人になったら、俺のおよめさんになってくれよな!  あぁ、遠のく意識の中で、忘れたかった恥ずかしい告白まで蘇ってくる~。 「レンヤ。レンヤ?」 「く、苦しい……」  懐かしい夢を見た。  昨夜、珍しく部屋の掃除なんかしたからだ。  懐かしいピアスを見つけたから、懐かしい夢を見たんだ。  懐かしいピアスを見つけたから、懐かしい親友と再会する日になったんだ。
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