0人が本棚に入れています
本棚に追加
二人で空を見上げながら、ゆっくりと歩いて、おしゃべりをする。
「わっ」
穏やかな夜が、急に反転した。
涼太が転んで、手をつないでいた私も涼太の上に倒れこむ様に転ぶ。
降ったばかりの粉雪が、転んだ衝撃でぶわっと舞い上がって空に散った。
きらきら、きらきらと、雪のひとつひとつが月に光る。
雪に寝転んだままの涼太が、すごい、と感嘆の声を漏らした。きらきらとした瞳が、空を舞う粉雪を見つめている。
「雪も、虹色に光ってる」
冷たいけどきれいだねぇ、と嬉しそうに笑っていた。
その顔を眺めて、「涼太が好きで良かった」と呟くと、さっと立ち上がって彼の手を引く。
コートの雪を払ってやると、その雪もまた風に乗って、きらきらと舞っていた。
きらきらとした雪が、二人を包む様に踊る。
「きれい」
涼太の手が離れて、私のコートの雪を払う。
解かれた手に冷えた空気が触れて、ぬくもりが名残惜しくて、きゅっと手を握りしめた。
「帰ろうか」と、歩き出した涼太が二歩先で手を差し伸べる。
雪に残る足跡に、いつまでもこうして一緒に居られたらいいなと願う。
二人の足跡が、ずっと並んで続けばいいなと願う。
差し出された手を取ると、またぬくもりが手に戻ってきた。
「すっかり冷えちゃったね」
そう言った涼太が盛大にくしゃみをした。
「雪遊びなんてするからよ」
「転んだだけだよ」
帰ったらこたつでゆっくりしよう、と二人、身を寄せて歩いた。
白く吐く息の向こうで、まっさらな雪がきらきらと光る。
真っ白な世界も、真っ暗な夜も。
涼太の心を通してみる景色は、どれも驚くほどに美しく、私にも鮮やかに輝く。
「好きよ、涼太」
最初のコメントを投稿しよう!