0人が本棚に入れています
本棚に追加
少し前までは、その瞳は同じくらいの高さにあったのに。
見えるものも同じだと思えていたのに。
「涼太、おっきくなったよね」
「え、なに、突然」
なんだか子ども扱いされたみたいだ、と眉を下げて苦笑した。笑うと、癖のある髪がふわりふわりと愉し気に揺れる。
「彩夜ちゃんが―――・・・」
「私が縮んだんじゃないからね」
空いた方の手でくしゃりと柔らかな髪を撫でると、涼太が軽くキスをした。
「・・・・・涼太、猫みたい」
頬が熱い。
照れくさくなって、ふいと目を逸らして歩き出すと、同じように涼太も歩き出してくすくすと笑う。歩幅の違う足音が、静かな夜にゆっくりと響いていた。
「彩夜ちゃん、冬の散歩は嫌だった? 寒いの得意じゃないもんね」
「そんなことない」と、慌てて否定する。
あまり好んで外出しない、出不精な私だけれど、恋人との散歩を思いのほか楽しんでいることに、自分でもびっくりするくらいなのだから。
いつも忙しそうなのに、何かにつけて、こうして二人で過ごす時間を作ってくれる。
昔から涼太は、私に優しい。
「こうして涼太とおしゃべりしながら歩くの、楽しくて好きよ」
よかった、と涼太が相好を崩した。
最初のコメントを投稿しよう!