捨てられた人

3/14
前へ
/27ページ
次へ
 数日後、 慶二の体調はかなり良くなったが、 記憶は戻らなかった。  寡黙になって鬱状態の慶二を ゲンは頻繁に訪ねた。 慶二はゲンの頭を撫で少しだけ笑顔になった。 「そういえば・・・健二さんを見付けた最初の日、 ゲンが近付いてさかんに服の臭いを嗅いでました、 ズボンなんか濡れてたけど・・・」  忍が思い出して言った。 「たぶん、慶二さんの何か手掛かりを掴んだんだわゲン、 ゲンが話せないからもどかしいわね」 ため息を吐くみつば。  慶二の体調は良くなったが、 他の人とは話をしない、そういう性格なのだろう、 一人で仕事をしていたのか?  慶二の手は細身の体に合わず分厚く骨太の指だった。 「肉体労働か、農林業関係の人だったのかな」  思いを巡らす健太だった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加