学園編1

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メモを取るシャリシャリとした音と時計の音が教授の熱弁に拍車をかける。 しかし、俺は講義に身が入らなかった。 目を閉じて考える。 大学を卒業するはあと数か月だ。 しかし、何をやりたいかいまだに決めかねている。 大抵の人は自分が学んだ学問の延長線上に進路をとる。 情けないことだが、俺は学んでいる分野に興味を持てない。 高校時代に得意な分野の延長として大学を選んだのだが、なぜか好きになれない。 大学に入学して卒業するころにはやりたいことが必然と見えていると思っていた。 しかし、まったく見えない。 見えないしどうすべきかわからない。 なぜ働くのだろう? お金が必要だから? みんな就職するから自分もする? 答えを求めていたがいまだ答えは出ない。 しかし、時間はない。 だから、それなりに大きめの会社で正社員ならどこでもいい。 そんな中身のない社会人になろうとしていた。 空っぽの自分に響き渡る終業のチャイム。 目を開くと社会に出る前の生き生きとした学生たちが目の前を通り過ぎる。 卑屈な考えを遮る様にパンと後頭部をはじかれた。 痛みはないがうっとうしい。 ゆっくりと振り向く。 ???「ヒカル~。飯行こうぜ。飯。」 テンションの高い長身でガタイのいい男、ゴウが満面の笑みで豪快に吠えている。     
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