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〈悪かったって……さて、と〉
「ん……」
大剣に変化している青年、『久遠』と呼ばれた彼の声色が変わる。それを合図に九尾の目も鋭くなった。
眼前には依然として漆黒、しかしその闇からズルリと何かが這い上がってきた。
形容し難い異形、人に仇成す怪異、この世界の何かの成れの果て。
凡そ人とは言えず、唯々害意を振りまき時に人を取り込む事もある、言葉そのままに『災害』であるそれが塗り潰された黒から現れた。
三メートルはあろうかと見紛う程の丈、振り乱した黒髪、痩躯ながら節々が隆起した体躯、そして何よりまず間違いなく人間とは思えない青白い肌。これが彼女らが請け負った依頼の目標。
「これがターゲット、『滑らかなる切り傷(スリッピーキラー)』ね」
〈随分禍々しいな、おまけに武器はデカいカッターときたもんだ〉
「こんな敵、今に始まったことじゃないでしょ」
〈ごもっとも〉
場にそぐわない会話をする二人、その間にもスリッピーキラーはキチキチと刃を出し臨戦態勢となっていた。カッターを模した刃『削首の折剣(スクリープカッター)』
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