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一
――僕らは怖がりで、だから怒鳴り散らして喚き散らして、いっそ壊してしまいたくなって。
だけど、僕らには壊す『才能』がない。
実際的な力とか、行使するための度胸とか、孤独になる覚悟とか、そういったものを一切持ち合わせていないから。
そうして、悩み倦ねた末、才能のない僕等は、本当に、“壊してしまう”。
上手な人たちが、すべからく修復できるように壊すのとは違って、
――『コワシテ』しまうんだ――決定的に――絶対的に――
――致命的に――自分自身を――“壊死してしまう”。
だけど、例えば、そんな才能を授かったとしたら?
憧れのあの人たちのように、そんな才能を持っていたら?
僕らも、もっと『独り』じゃないって、そう思えるようになるのかな?
自分を誇って、自慢して、好きになって。
そんな風になれるのかな?
あんな風に笑えるようになるのかな?
すべてに全力で、強くて、楽しくて、格好良くて。
あんな風に、なれるのかな?
ねえ、返事をしてよ――ねえ――
――――――――
――――
――
◆◆◆
暗黒が少しずつ明けて、生々しい赤味が視界に広がっていく。
いつものことだ。
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