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「そういえば、なぜアルシュファイドの騎士たちが乗った船がそこに居合わせたのだろうか?」
アークが答えた。
「我が国からお帰りになるところでしたから、特に護衛させていたのです」
「なんと、行き届いたことだ。今回の会合にも船を用意するなど、なかなかできることではない」
「ご招待した上ではそこまですべきかと思いましたので。快適に過ごせたようでよかったです」
「ところで話は戻るが、護衛させていたという騎士はアルシュファイドの海軍なのだろうか?」
「少し違います。彼らは海岸警備隊です。海軍となると、兵士たちも含めた構成となります」
「兵士?騎士とは違うのだろうか?」
「ええ。騎士は特別なのです。教育もしていますが、何より胸に折れない剣がある。誓いという名の剣です。彼らは誓ったのです。その身にある力でアルシュファイド王国双王の意向に従い、人々を助けると」
「人々を…ナイデア共和国の民をも救ってくれた」
カティムの言葉に、アークはにこりと笑った。
カティムはアークの懐の深さを知った気がした。
「彼らを遣わしてくれてありがとう。とても助かったよ」
「お役に立てて良かった。隣国ニルトメセナ共和国に逃げ込んだ賊がいると聞いていますが、被害は?」
「今のところないようだ。軍によく警戒させている」
「ニルトメセナ共和国にも地図を送っておきましょう。前回役に立ったようなので」
「地図?」
「ええ、幻術に惑わされないようにです。正確さは保証します」
ネリウスが口を挟んだ。
「地図といえば、詳細な植物分布図、助かりました。数少ない資源、有効に使っていきたいと思います」
「ええ、香辛料にズロウラ、増やせるといいですね」
「ズロウラとは何かね?」
カティムの問いに、ネリウスが答えた。
「我が国で糸にすることができる、おそらく唯一の植物です。育成の仕方まで教えてもらえて、大変参考になります」
ジエナが言った。
「糸といえばマカラン共和国ですね。我が国も世話になっています」
マカラン共和国はシャスティマ連邦の構成国のひとつだ。
「ああ、マカラン共和国はそれで何とか食べていけている」
「食物は生産していないのですか?」
アークが聞くと、カティムは難しい顔をした。
「なんとかプノムが育てられている。サズが育てられるといいのだがな…」
「土地に合いませんか」
「そのようだ」
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