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―Ⅵ―
翌日、9時に王城の玄関広間に集まった客人一行は、歩いてレテリム港に向かった。
展望露台で湖の景色を一望すると、港の総合案内所へと行く。
そこで時刻表や船選びの基準などの説明を受けると、桟橋に行ってそれぞれの船を見た。
船選びの基準とは、客船と貨客船と貨物船の違いで、アルシュファイド王国では、客船は人を乗せるのが主な目的、貨客船は人と荷物の両方を載せるのが目的、貨物船は荷物を載せるのが主な目的なのだが、客船でも客の荷物として馬車のような大きな荷物を載せる区画を持つ船もあれば、貨物船でも荷の持ち主を乗せる区画のある船もあるのだ。
船の説明が終わると、一行は港の客車寄せに行って、そこから発着する馬車の説明を聞いた。
そのあとは港通りを歩いて回り、食べ物屋や土産物屋、遊技場が多いことを知る。
「昼は魚市場に行きましょう」
シィンに言われて、一行はちょうど近くに来ていた魚市場パッセルムに入った。
あまり人はおらず、カティムが、ずいぶん閑散としているなと言うと、今はそういう時間帯なのです、とシィンは返した。
案内された食堂では、泳いでいる魚などを選んで、好みの調理をしてくれたものに、ヒュミと汁物が付くという形だった。
カティムは欲張って数種類選び、皆で分けていただくことになった。
「昼からはいかがなさいますか?先ほどは港通りの店を外側から覗くだけでしたが、実際に店のなかに入って、どんなものか確かめてみてはいかがでしょう?」
シィンの提案にカティムは頷いた。
「そうだな、遊技場というものが気になった。風のものと土のものがあったな。どちらがいいかな?」
「そうですね…風は体を大きく動かすもの、土は状況の変化を楽しむもの、という感じだと思います。日頃から体を動かされないなら、風の方がすっきりすると思います」
「では風に行こう。皆はどうする?」
ジエナが言った。
「ご一緒します」
ネリウスは少し考えて言った。
「私は風は行ったので土にしようかな」
「ではふた手に分かれましょう」
そういうことで、パッセルムを出た一行は、ネリウスとサイネイストとファイナだけ別れて、土の遊技場レステンに向かった。
カティムたちが風の遊技場ラストゥに入る頃、王城ではボルファルカルトル国第二王子ジョージイ・ナパムと通商産業大臣ユーイ・カルデナがアークと会っていた。
「昼食はお済みですか?」
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