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貴賓用談話室に座ると、アークに聞かれて、ジョージイは微笑んで答えた。
「済ませました。今回も船を用意して下さり、ありがとうございます」
「ご招待したのはこちらですから。ジョージイもユーイも元気そうでなによりです。交易の状況はどのようになっているでしょう?」
ユーイが身を乗り出して答えた。
「好調です。光の道がとうとうベセネまで通じて、馬車の速度が格段に上がりました。枝の道も使う者が増え、物の流れが円滑になっています。カザフィスの方では、木の移植が進み、育成は順調で、ウォーターループも水を溜めています」
ボルファルカルトル国は頭上を木で覆われている、光の届きにくい暗い国だ。
そこに光のしるべの道を通すことは、ボルファルカルトル国で生活する上で非常に有益なことだった。
また、枝の道、すなわち枝を繋げて輸送路として使うことは、人々の生活を豊かにしようとしていた。
カザフィス王国では、現在木を荒野であるその土地全体に広げようとしているところで、水を必要としている。
ウォーターループとは、生長が終わって倒れると、水を周囲に呼んで池を作る変わった木だ。
地下から水を得られないカザフィス東部では、貴重な水源となる。
アークは満足して頷いた。
「草木師(そうもくし)たちの様子はどうです?」
草木師とは、草木の栽培や診療を行う者たちだ。
現在、カザフィス王国に派遣して、荒野での木の繁殖などに従事している。
「元気ですよ。やりがいのある仕事を得たと思ってくれているようです」
「それはなによりですね。木工師(もっこうし)の方も造船の技術を身に付けて、元気に働いています」
木工師とは、家財を作る細工仕事、家を作る大工仕事を行う者だ。
ボルファルカルトル国の木工師たちには造船の技術がなかったので、アルシュファイド王国で預かって身に付けさせたのだ。
「ジャグラの伐採が始まったら、こちらの造船師とともに送って、カザフィスの船を作ってもらいましょう。その他の木工師には、家を作ってもらうことになるでしょう。様子を見て、また造船の技術が必要になりそうなら、こちらに木工師を送って下されば、育てます」
ジャグラとは、生長の早い木で、木材としても優良なのだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そんな話をして、茶を飲み、少し散歩をしたいというジョージイに彩石騎士の1人、赤璋騎士アルペジオ・ルーペン…アルを付けて送り出した。
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