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―Ⅱ―
朝の9時に出掛けたカティムは、夕方の17時に城に戻ってきて、興奮状態だった。
部屋に案内され、湯を浴びてもなお、その状態は続き、小間使いに談話室に案内され、アークを見るや、今日見てきたことを話した。
造船所の高い塔からの眺めの素晴らしさ、分担している造船の様子、逆に協力してひとつの造船を成し遂げる様子、ボナ川沿いの少量生産の工場の様子、その奥にある大量生産の工場の様子と、とても見足りない、と言う。
「アルシュファイドはとても技術が進んでいる…!我らにも同じことが可能だろうか」
「必ずしも同じことをする必要があるとは言い切れません。現在そちらで行われている農業は得難いものです。だからこそ商人たちは商売をしにそちらの国々へ渡るのでしょうから」
「む、そうか。生産をやめるわけにはいかないな」
少し落ち着いた様子のカティムが言った。
「明日からもまた色々とご覧に入れたいです…ああ、来ました。ルーク、こちらシャスティマ連邦大統領のカティム・シャスティマ様です」
カティムが立ち上がり、ルークは笑顔で歩み寄った。
「私が祭王ルシェルト・クィン・レグナです。どうかルークとお呼びください」
「私のこともカティムと呼んでほしい、ルーク」
ルークはにこりと笑顔を広げて、そうします、カティム、と言った。
「ところでなんの話をしてたんだい」
ルークに聞かれて、アークが答えた。
「カティムが今日見て回ったことの話をしていました。ルーク、カティムも応用修練場のお披露目に参加してもいいでしょう?」
「もちろん!その前に一度、基礎修練を体験してほしいな」
「基礎修練?」
カティムが聞くと、ルークは頷いた。
「ええ。アーク、時間取れる?」
「ザクォーネからが円の日の到着だから、時間はあります。取り敢えず、湖岸一帯を案内してからにしましょう」
「分かった。それで、今日はどんなものを見たんです?カティム」
そうしてしばらく話したのち、夕食の時間になって、カティムは宰相ユラ-カグナ・ローウェンを紹介され、外務省長官グレゴール・ザムダと再会した。
グレゴールとはシャスティマ連邦に造る道の件で会い、話したことがある。
食事を終えると談話室で翌日の予定を話し合い、時間になると別れて、カティムは就寝した。
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