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―Ⅴ―
翌日、この日はサールーン王国から第四王子にして次期国王となることを定められた王太子、ネリウス・クー・ルーンと第五王子サイネイスト・クー・ルーンが従者3人とともにアルシュファイド王国に到着した。
出迎えにはファイナが行き、貴賓用談話室に招くとアークと再会を喜んだ。
「皆さんお好きな所へいらしていて、お姉様のエリィは14時から芝居に行かれるそうです。合流なさいますか?」
「いえ、できればこちらで選別師として通用するか確かめたく思います」
サイネイストがそう言って、ネリウスは石工師(いしくし)たちの様子が見たいですねと言った。
石工師とは、サールーン王国では、石の切り出しを行い、細工物を手掛けたり、家を建てたりする者のことで、ルークの事業の拠点となるグランレン修練場の建設のために派遣しているのだ。
「ではそれぞれ案内させましょう。ファイナ、ネリウスには機警隊を案内に付けてください」
「承知しました」
「きけいたい…とは?」
「私の直属の騎士隊です。これまで彩石騎士がいたので必要を感じなかったのですが、彩石騎士の代行が必要な場合などに活躍してくれます」
ネリウスは頷いて、どのような者たちか楽しみに待った。
やがて来たのはトレント・マッカンティとカヌイ・セーフトで、ネリウスたちは早速黒檀塔から船に乗って石工師たちのいる場所へ向かった。
サイネイストとファイナは風の宮に向かい、選別師試験を試してみることにした。
これは成功して、サイネイストは自信を持ち、この試験方法をサールーン王国に持ち帰ってもいいかとファイナに尋ねた。
「構わないはずだ。確認してみる。ところでこのあとはどうする?」
「そうだな、教示堂を任されて、そこに図書室の設置をすることになったんだ。こちらの図書館の仕組みなど知りたい」
「分かった、案内する」
ふたりは図書館へと向かい、蔵書の区別から閲覧の仕方、貸し出しの仕組みまで説明してもらった。
そんな風にそれぞれが目的を果たし、王城に戻ると、エリィとジエナは弟たちとの再会を喜び、カティムは新たに紹介された人物たちを興味深く見つめた。
この日の夕食は貴賓用の食事室に用意され、カティムは数ヵ月前に起こったパエラキースト共和国沖でのネリウスの活躍について知りたがった。
「…活躍と言うほどのものでもないのですよ。面倒はすべてアルシュファイドの騎士たちに任せてしまいましたからね」
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