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自分の手や足を改めて見て、触れてみる。
人間としての皮膚感覚や呼吸器官が宿り、血も流れているであろうこの体。
眠くもなるし、お腹も空く。
本当に幽霊なのかと疑いたくもなるが、これはきっと、幽霊というより死んだ後のおまけのような体なのだろう。
この体も、いつか消える。
消えるとしたらいつ?
どうしたら消える?
逆に、消えなかったら──。
死亡認定されたこの体で、この先どうやって生きていけば──死んでいるので語弊があるが──どうやって過ごしていけばいいのか。
私はもう一度、残留思念について考えてみた。
きっと私には、この世に未練というやつがあるのだ。
真っ先に考えうるのは、怨みを晴らしたり心残りを綺麗さっぱり清算すること。
怨むとしたら両親や中学時代のクラスメイトたちだけど、両親はもうこの世にいないし、クラスメイトたちが今頃どうしていようが気にもならない。
それ以外に深い繋がりを持った人なんていないし、ましてや後悔なんて──。
(ああ……)
その時、私はある人物のことを思い出した。
コンビニで働いていた彼。
中学時代、同じ夢を抱いて意気投合した彼だ。
彼のことを思い出した瞬間、私の中に何か細い針のような光が差し込み、謎の糸口が見えた気がした。
どうせもう、死んでいる体。
だったらなりふり構わず、やり残したことをやってやろう。
そう思って足が向いたのは、彼のいるコンビニだった。
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