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それから私は、インターネットカフェで寝泊まりをしながら、彼のいるコンビニに通い続けた。
もちろん、表向きは買い物目的。
食べ物や飲み物。それに、旅行用の歯ブラシセットやシャンプーなんかの生活用品も買い足しながら。
客の少ない時間帯に、彼と少しずつ話をするようにもなった。
はじめは、取り留めのない世間話だったり天気の話。
珍しい商品を持っていけば、「それ今日入荷したばかりなんですよ」なんて笑いかけてくれる。
中学の時の話はほとんどしない。
彼が私の“暴力沙汰”だったり学校に来なくなった理由なんかを知っているのかどうかは知らないけど、その傷口に触れないようにしているのか──。
お互いの話も、特にはしなかった。
私は話しようがないし、彼も自分から近況を話そうとはしなかったけど、いつしか言葉遣いが他人行儀ではなくなった頃──。
「今でも、夢を追い続けてるの?」
客のほとんどいない時間帯。
床のモップがけをしていた彼に、私の方から思い切って尋ねてみた。
彼は一瞬目を見開いた後、「うん、一応ね」と控えめに答えた。
それから、彼は自分の境遇を少しずつ話し始めた。
私は彼の話を聞く。
時折相槌を打ったり、頷いたりしながら。
彼と話していると、生きている心地がする。
私はもう、お墓に入って死んでいるっていうのに。
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