渇き

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 その日の夜、コンビニ近くで交通事故があった。  死亡事故だった。  被害者は女性。  昨日再会したばかりの、彼女だったのだ。  彼女は、死んだのだ。  同じ夢を持ちながら、あんな形で諦めざるを得なかった彼女が、引きこもり生活の挙げ句、あっさりと。  居たたまれない思いが迸るのと同時に、僕は吐き気を覚えた。  自分と同じであるような気がした。  夢も叶えられず日々の生活に忙殺されながら、無為に生きている。  きっかけ一つで、あっさり死ぬことだってあり得る。 「今だに夢を諦めてないなんて凄いじゃん」 「夢は諦めちゃダメだよー」 「俺には絶対できねーわ」 「夢を捨てて社畜になった俺らの分も頑張ってな」  堅実に生きる道を選んだ友達の侮蔑を含んだ励ましの言葉はむしろ重圧でしかなく、音を上げるすれすれの状態だった。
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