感覚

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 感覚

 それから、転々と過ごすネットカフェで、自分の死亡記事を見つけた。  現場は、国道と一般道が交わる十字路。  国道を走行していたセダンが、横断歩道を歩行中の私をはねたとある。  運転手の信号無視による過失。  しかも法定速度を10キロほどオーバーしていたらしい。  というのも、車は黄色信号で無理にスピードを上げ、赤信号になっても強引に突っ切ろうとした。  そこに、歩行者用の信号が青になり、渡ろうとした私がいた。  雨で視界が悪くなっており、私の存在に気付かなかったとの供述もある。  あの横断歩道はコンビニから50メートルほど離れた位置にあり、一通り走った後に私は横断したのかもしれない。  セダンの接近にも気付かずに。  ただ覚えていることと言えば、脇腹と肩の激痛、腰骨に響く衝撃、鼻の奥がつんとする血の味と、頭の真芯でぷつっと何かが切れたような感覚だった。  記事に詳細を載せるわけにはいかないので書かれてはいないが、私の体はグシャッとぶつかるようにしてひしゃげ、さらにフロントガラスにぶつかってから地面に放り出されたのだろう。  どこか気持ちは達観していたけど、あの瞬間を思い出すと気持ち悪くて吐きそうにはなった。
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