クリスマスイブの鈴の音

3/15
前へ
/15ページ
次へ
私が幼稚園の頃に、父は病気で天国に旅立ってしまい、母は女手一つで私を育ててくれている。 そんな母の苦労を私なりに理解していて、小学校5年生になった私は12月のある日、母にこんなことを言った。 「おかあさん、私はクリスマスプレゼントいらないからね!」 私の言いたいことを母は理解してくれたようで、 「美優は、優しい子だね!」 と私の頭を撫でてくれた。 でも母は、 「クリスマスの日くらい、何か買ってあげるよ!  美優は、毎日おかあさんの手伝いをよくしてくれるから、そのご褒美だよ!」 と言ってくれた。 その時の私は、買ってほしいものがなかったわけではないが、子供ながらに母のことを心配して、 「今、ほしいものないんだよ!」 と嘘の発言をした。 私は、母の負担を少しでも減らそうと純粋にそう思っていた。 この年から、クリスマスの日の朝、サンタクロースからのプレゼントが私の枕元に置かれていることはなくなった。 少し寂しいような気もしたけれど、 (これでいい!) と自分に言い聞かせて、自分自身を納得させていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加