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結婚式が近くなるにつれ、私は何となく寂しい感情が湧き出ていた。
長年生まれ育ったこの家を出ていくことになるからだ。
私は母が1人になってしまうことを気にして、一緒に住もうかと母に話したけれど母は、
「新婚の2人の邪魔はしたくないよ!
私は、まだ元気だから1人で大丈夫だよ!」
と笑顔で話してくれた。
でも、そんな母の顔は、私にはどこかやつれたように見えて、
(母も年を取ったなぁ…)
と感じていた。
結婚式を半年後に控えた12月のある日、自宅で母と一緒に台所で料理をしていると母が急に倒れてしまった。
声をかけても母は気を失ったままのため、私は慌てて救急車を呼び出した。
救急車が到着し救急病院に搬送されると、母は集中治療室に入って緊急処置が施されることになった。
私が涼太に連絡を取ると、この日会社が休みの涼太が心配して駆けつけてくれた。
「様子はどう?」
「うん、急に台所で倒れて意識が戻らない状態だよ!」
私が答えると病院の廊下の椅子に座っていた私の隣に涼太も座って、そっと私の手を握り締めてくれた。
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