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篭目の元には、静まり返った夜の街並みが映像として送られている筈だった。映像を篭目の元へと送っているのは、街の至るところに国が魔物被害への対策として取り付けた監視カメラだ。もちろん、映像を民間人が使用する許可など国は出してはいなかったが。
何台か設置されたモニターの一台に画像を映し出しているカメラは、痩身の男の姿を捉えていた。千鳥と同じように全身を黒で統一しているが、時雨と呼ばれた男は細身のパンツに丈の長いコートをその身に纏っている。
「千鳥兄はそのまま直進。突き当りを左へ」
「はいよ」
ふらりと散歩でもするかのような足取りで千鳥が歩き出すのを確認して、篭目は時雨の方へと視線を移した。
「時雨兄、ご対面できた?」
「見えている」
ちょうど、角を折れた時雨の目の前に、千鳥の前から逃げ去った男が現れる。追われている自覚のある男は時雨が名乗らずとも、今しがた逃げてきた男の仲間であると本能的に理解したらしい。
「なっ!? 何だってんだよ!? お前らいったい何者なんだ!!」
「お前の始末を頼まれた。それだけだ」
「ふざけんなッ!!」
再び踵を返した男は、だがしかしその場で動きを止める羽目になった。理由は単純で、篭目のナビゲーションで動いていた千鳥が合流したからに他ならない。
「逃げても無駄だって言っただろ。人の話は最後まで聞けよ」
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