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そもそもエクソシストと呼ばれるのはカトリック教徒の祓魔師だけだ。だが、世界中に魔物が現れだしたのをきっかけに、この十年近くで祓魔師も退魔師も関係なく悪魔祓いや魔物退治を生業とする術者を人々がエクソシストと呼び始めたのは自然の流れだっただろうか。
千鳥と時雨が拠点にしているのは、市街地から少しばかり外れた郊外にある古い城だった。魔物が棲みつき、売りに出しても買い手がつかずに持ち主が持て余していたものを、二人はタダ同然で手に入れていた。
石張りの床に、二つの靴音が響く。大股な千鳥の足音と、静かではあるが存在感を主張する時雨の足音。対照的な二人に共通する事は、服の色くらいのものだろうか。
やがて数ある部屋のうちの一室の扉へと手を掛けたのは千鳥だった。時雨は、長いコートのポケットに入れた両手を出そうともしない。
重そうな軋みをあげながら開いた扉の先は、千鳥と時雨の寝室だった。数えきれないほどある部屋の中で、二人が使っているのはこの部屋と、事務所にしている部屋だけである。
寝室と言っても部屋は広く、衣裳部屋や書斎を含んだ間取りだけで言えば小さなアパルトメントなどまるっとひとつ入ってしまう。
「時雨、風呂は?」
「入る」
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