第一話 やきもちチョコレート

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第一話 やきもちチョコレート

「こっ、これは……!」  僕は思わず自分の机の中を二度見してしまった。見慣れない物体がそこにあったからだ。  おそるおそる取り出してみると、赤地にピンクのハート模様が乱舞する文庫本大の箱。きれいな金色のリボンが十字に結んである。  今日は二月十四日。言わずとしれた、バレンタインデー。ということは、これは間違いなく。 「チョコレート……」  ごくりと生唾を飲み込んでから、はっとして教室を見渡した。いくつかのグループに分かれて談笑しているクラスメートの中に、あの二人組の姿はなかった。どうやらまだ登校してきていないようだ。あいつらに見つかったら、きっと取り上げられてしまう。  一年生の時も、バレンタインデーに僕の下駄箱にチョコがいれられているのを目ざとく見つけたあいつらは、「真尋のクセに生意気だ」なんて言ってそのチョコを没収してしまったのだ。  自分達は大きな紙袋がいっぱいになるくらい女子からチョコをもらっているのに、強欲すぎる。いくらスポーツ万能で背が高くってイケメンだからって本当に横暴だ。  僕はガクランの裾を捲りあげると、お腹を少しへこませてズボンのベルトのところに箱を挟んだ。そして、廊下に飛び出す。  とにかく、あいつらに見つかる前にどこかに隠さなきゃ。  隠し場所、と考えた時に真っ先に頭に思い浮かんだ場所があった。その部屋の主からは「いつでも来ていいからな」と言われている。あそこだ、あそこしかない。
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