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第二話 マシュマロの報復
今日の僕には、やらなければならないことが二つある。
まず一つ目は、バレンタインデーにいくつかもらっていたチョコのお返し。そう、今日はホワイトデーだ。
自分で言うのもなんだが、僕は結構人気がある。生徒会の書記という役職にもついているので、同じ学年に月城学の名を知らない人間はいないはずだ。「学年一の秀才」、「頼れる男」で通っている。
チョコには尊敬や憧れ、それに普段の善行に対する感謝の念もこめられているのだろう。その数は、なかなかのものだ。
朝礼の始まる前や授業の間の短い休み時間にすばやく教室を一つ一つ回り、チョコをくれた子を呼び出す。あくまでも目立たぬように、というさりげない心遣いも忘れない。
お返しには全てクッキーを選んだ。ホワイトデーのお返しにはそれぞれメッセージが込められているという事は、すでに調査済みだ。クッキーの意味は『友達のままでいましょう』。さしずめ、サクッとドライな関係のままでいましょう、というところだろうか。それを知ってか知らずか、ほとんどの女子が嬉しそうにクッキーを受け取ってくれた。
「わぁ、おいしそうなクッキー! ありがとう、月城くん!」
「どういたしまして。自宅の近くにケーキ屋があってね。とても評判がいいから買ってみたんだ」と軽く嘘をつきつつ、「またよかったら、味の感想を聞かせてね」とアピールもしておく。
たまに、渡したクッキーを悲しそうに見つめる子もいるが、何も気づかないフリをするのが礼儀というものだ。中途半端な優しさや同情は相手を却って惨めな気分にさせる。
あくまでもスマートにスリークに。それが僕のモットーだ。
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