第二話 マシュマロの報復

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「そう言えばさっき、五所川原先生何か用事があるとかで慌てて帰るのを見たよ。もう校内にはいないんじゃないかな」 「えっ、そうなんだ」  もちろん嘘だが、今、有栖川を帰すわけにはいかない。事の真相をぜひとも知りたい。  僕はゆっくりと笑みを浮かべて、優しい声を出した。 「聞きたいことはまた明日にすればいいよ。それか、何か勉強でわからない事があるなら、僕がかわりに教えてあげられるかもしれないけど」 「ううん、いいんだ。勉強の事じゃないから。それに、明日じゃもう遅いし」  ふるふると首を横にふる有栖川に、疑惑が強まる。勉強の事以外に、五所川原に聞きたいことがある。それもホワイトデーに関連して。随分と核心に近づいてきたようだ。 「じゃあ、五所川原先生に何か悩み事相談?」 「悩み事っていうか、五所川原先生に聞けば誰だかわかるかなぁと思って」 「誰か、人探し?」 「あ、ほんと、もういいんだ。きっと五所川原先生も忘れてると思うし、諦めるよ。月城くんも気にしないで?」 「そう……」  その時、僕の頭に一つひらめいたことがあった。そうだ、有栖川がどんな性格かなんてよく知っているはずじゃないか。先ほどから感じている違和感の正体にもっと早く気づくべきだった。スマートにスリークに、それは僕のモットーであって、有栖川が同じように振舞えるはずがないのだ。  僕はカバンの中から先ほどの包みを出した。
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