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「この包みの中身が何だか、わかる?」
「え、なーに、それ。なぞなぞ?」
目を瞬かせ小首を傾げる様子が、演技だとはとても思えない。
「じゃあ、ヒント。白くてふわふわしていて、甘い物だよ」
「んーと、わたがし?」
「はずれ。マシュマロ」
包みを開いて見せると、有栖川はきらきらと目を輝かせた。
「わぁ、おいしそう!」
その瞬間、希望的観測が確信にかわった。自分がしていた初歩的な勘違いに大笑いしたくなる。
「いいよ、食べて」
「いいの!? ありがとう!」
はむっとマシュマロを頬張り、幸せそうに口を動かす有栖川。こちらまでその表情につられて笑みが零れてしまう。
「あ、そうだ。じゃあお礼にこれあげる」
有栖川はカバンからごそごそと小ぶりのガラス製のキャンディポットをとりだした。
「今朝ね、五所川原先生がくれたんだ。……あっ!」
慌ててキャンディポットをもっていないほうの手で口を塞ぐ。
「五所川原先生が?」
「……うん、先生からもらったなんて言ったらエコヒイキになるからナイショだぞって言われてたのに……。わぁーどうしよう。言っちゃった……。ごめんね、月城くん。ナイショにしておいてくれる?」
絡まった糸が少しずつ解けるように、話しが見えてきた。
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