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「五所川原先生からだという事は黙っておくから安心して」
にっこりと微笑むと、有栖川はほっとしたように肩の力を抜いた。
「イチゴ味がオススメなんだよ。はい」
赤いキャンディを小さな手でつまんで僕の鼻先に差し出す有栖川。自分もあーんと口をあけてしまっているのがむしゃぶりつきたくなるほどかわいらしい。鼓動が激しくなりすぎて卒倒しそうになるのをぐっと堪えながら唇でキャンディを掬い取ると、有栖川の指先が唇に触れた。
「どう? おいしいでしょ?」
「うん、おいしいね」
こちらの劣情に気づく様子もなく、有栖川は天使のような笑顔を振りまいている。
「ところで、どうして五所川原先生は有栖川くんにキャンディをくれたんだろうね?」
「うーん、あの先生って甘い物は嫌いだなんて言ってる割りにはよく甘い物持ってるんだよね。親戚にお菓子屋さんでもいるのかなぁ?」
どうやら有栖川は五所川原の目論見に気づいていないようだ。ざまぁみろ。
「それなら、わざわざ有栖川くんのチョコを盗ったりしなければいいのにね」
「えっ! なんで知ってるの?」
やはり、そうだ。
どういう経緯でそうなったかまではわからない。
ただ、僕が有栖川に贈ったチョコは五所川原の手に渡り、ヤツは添えられていたメッセージカードを読んだということだ。
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