第二話 マシュマロの報復

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 最初、僕は有栖川が下駄箱のマシュマロの贈り主だと思った。待ち合わせ場所で直接受け渡しする事を嫌って、下駄箱に入れたのだと。そして、まるで何事もなかったかのように僕に声を掛けたのかと思っていた。下手な同情をしないようスマートにスリークに、だ。  だが、実際は有栖川がそんな大人の対応をできる訳がないし、約束もマシュマロのことも、さらには誰がチョコの贈り主であるのかも全く知らなかったのだ。  僕はバレンタインデーの日に、こっそりと隣のクラスの有栖川の机にチョコを入れた。もちろん手作りだ。  最初は息抜きのつもりで始めたお菓子作りだったが、意外にも嵌ってしまい今では趣味と言える。今日のクッキーも全て僕が焼いたものだ。  一年の時も有栖川の下駄箱にチョコを忍ばせた。朝一番に学校に出るのはいつものことなので誰にも怪しまれない。その時は名前なんか書けずにただ食べて欲しくてした事だったけれど、今年は思い切ってちゃんと名前をいれた。一つの出来事を達成できれば、次はより多くの結果を求めてしまうのが人間の業というものだ。返事がほしいと願って当然だろう。  メッセージカードに、返事はホワイトデーにしてほしいと記した。OKならキャンディ、ごめんなさいならマシュマロを、と。
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