第三話 パンツがない!

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 未だに母親が買ってきたパンツを穿いているというのもいかがなものかと思いつつも、面倒なのでそれは黙っておいた。背後が何やらざわついている。見ると、クラスの委員長が鼻血をだしていたが、日下と土居はすぐにそれも黙殺した。  真尋を押しのけ、ロッカーの中から水泳用のバッグを取り出し、中身を確認する。コンビニ袋に入れられた使用済の水泳パンツと、ハンドタオルとポケットティッシュ、こども用しみない目薬、それにイチゴ味のキャンディが二つ。ロッカーの中にも制服の半袖の開襟シャツと、黒のズボンがきちんと畳まれ置かれているだけで、パンツは確かになさそうだ。  真尋が使っていたロッカーの周辺で、扉が閉じているロッカーも開けてみた。既に扉が開いているロッカーは、誰かが使用中だから現時点では捜索の対象外だ。やはりパンツらしきものはない。  念のため、プール上がりの何十もの足で濡らされびしょびしょになったスノコを持ち上げ、その下も覗いてみたが何も落ちていない。どうやら、本当にパンツは消えてしまったようだ。それを確認すると唐突に、日下は声をあげた。 「誰もここから出るんじゃねぇぞ!」  クラスでも一目置かれる存在である日下の毅然とした口調に、ざわついていた更衣室がしんと静まり返った。幸いにも、まだ入り口のドアは閉まったままで、誰も出て行った形跡はない。日下はぐるりと周りを睥睨すると、威圧するような声でもう一度宣言した。 「真尋のパンツが見つかるまで、誰もここからは出さない」
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